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トリクルダウンは現在の日本では起こり得ない

2015年3月3日

トリクルダウンとは

トリクルダウンとは、
豊かな者がより豊かになれば、社会全体にも富が滴り落ちる(トリクルダウンする)
という考えだ。
アベノミクスを正当化する論理として、安倍内閣はトリクルダウンを用いた。

トリクルダウンは、原理的には起こり得る。
豊かな者が店で高価な買い物をすれば、店の売上が上がる。
企業が事業を拡大すると、雇用が増える。
そうした波及効果が経済全体に及ぶ。

実際に、トリクルダウンが起こった国をいくらか挙げれば、アメリカ、中国、そして過去の日本だ。
アメリカでは、シリコンバレー(西海岸の先端ITの集積地)や、ニューヨークの先端金融業を中心に起きた。
中国やアジアの新興国でも、似たような事が起きている。

高度経済成長期の日本でもトリクルダウンが起きた。
企業が成長する過程で、従業員にも恩恵があり、日本経済全体が活性化した。 理想的なトリクルダウンと言えるだろう。

現在の日本でトリクルダウンは起きていない

しかし、トリクルダウンは、いつでも起きるわけではない。
現在の日本では、「トリクルダウンどころか、逆に日本人が貧しくなった分だけ、企業(特に大企業)が潤う」という現象が起きている。

原因は、企業の利益増加が生産性の向上によるものではなく、円安になった分だけ増加しているに過ぎないからだ。

上記の一言を、「トリクルダウン」と「現在の日本」を比較して説明しよう。
下記の表は、「①売上、②利益、③生産量、④雇用(正社員、非正規)、⑤従業員の賃金」の違いを示したものだ。

トリクルダウンと現在の日本の状態の違い。①売上、②利益、③生産量、④雇用、⑤従業員の賃金で比較する。①売上と②利益については、どちらも増加している。最大の違いは③生産量だ。生産量が変わらない(もしくは減少している)から④雇用と⑤従業員の賃金が減少する。④雇用自体は増加しているが、「正社員」の雇用は減少している。増加しているのは非正規労働者だけである。

トリクルダウンは、現実に起こった事の方がイメージしやすいと思うので、「高度経済成長期の日本」に置き換えて思い浮かべてほしい。
まず、①売上と②利益については、どちらも増加している。

問題は、③生産量だ。
2012年と(円安の影響があった)2013年の生産量自体は、さほど変化していないし、輸出数量も増えていない。 それにも関わらず、売上と利益が増加しているのは、円安のメリットはもうないで述べたように、輸出する製品の売上が上がるからだ。

違いは、④雇用と⑤従業員の賃金に出る。
総務省の労働力調査によると、雇用自体は増加している。
ただし、増加したのは「非正規」の労働者だ。
世間では「正社員」と呼ばれている雇用は、減少している。
だから、従業員の賃金は増加していない。

高度経済成長期の日本では、企業が成長し、賃金の上昇という形で従業員にも恩恵があった。
現在の日本では、企業の売上と利益は上がったが、従業員の賃金は上昇していない。

さらに言えば、円安による物価高の影響で、一般人は損しかしない。
国民全体からすれば、「富が滴り落ちてくる」どころか、「富が吸い取られている」感じがする。

富の半分以上は海外に流出している

「アベノミクスで日本企業の株価が上がったじゃないか」と言う人がいる。 日本企業の株価が上昇したのは事実だ。

ただし、日本株売買の約6割は、海外の投資家だ。
つまり、株高による利益の半分以上は、国外に流出した可能性が高い。
残りの半分は、自社株を持っている経営者、株の持ち合いをしている系列企業、日本の一般投資家くらいだ。
得をしたのは、主に外国人投資家とごく一部の団体だけで、一般人への恩恵は薄い。

日本でトリクルダウンはこれからも起きない

上記の通り、現在まで、日本ではトリクルダウンは起きていない。
そして、これから起きる事もない。

安倍内閣の発足は2012年12月で、既に2年以上が経過し、円安と株高が顕著になった。
日本円は、2012年11月末のドル円為替レートは約80円であったが、2014年2月末には約120円となり、約40円ほど円安に動いた。
日経平均は、2012年11月末に約9400円であったが、2014年2月末には約18800円と約2倍になった。

これだけの急激な変化があったにも関わらず、GDPや従業員の賃金にはそれほど変化がない。
もし、トリクルダウンが起きると言うのなら、既に起きていないとおかしいのである。

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