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他国の労働環境を知る

2014年5月6日

日本の労働環境は先進国中最低

日本の労働環境は異常である。 日本の労働環境は、先進国中最低と言わざるを得ない。 それどころか、新興国と比較しても怪しいと思う。

他国でもブラック企業はある。 あるにはあるが、あくまでその企業単体の問題だ。
日本のように、社会全体としての問題にはならない。

まともな先進国であれば、労働者は法律で守られている。 労働違反が当然のようにまかり通っている先進国は、日本を除いて存在しない。

労働違反がまかり通っている理由(ブラック企業が増加している理由、と言い換えてもいい)のひとつは、「日本は労働に関する法律が弱い」からではないだろうか。
そう言われても、どのあたりが「弱い」のかわからない人もいるだろう。 だから、他国と比較しよう。

日本とドイツの労働の違い

日本と比較する対象にドイツを選んだ。 ドイツを選んだ理由は、日本とドイツは似ているからだ。
まず、人口数が同じくらいだ(2011年時点で日本約1億2000万人、ドイツ約8000万人、WHO世界保健統計参照)。
それから、GDPも同水準である(2011年時点で日本3位約5兆8970億ドル、ドイツ4位3億6073億ドル、IMF調査参照)。
そして、日本もドイツも工業で発展した国だ。 他国に自動車や家電品などの工業製品を輸出し、利益を上げている。 貿易立国として、日本とドイツはライバル関係にある。

このように、日本とドイツには多くの共通点がある。
ただし、労働に関しては大きな違いがある。
労働の違いを労働に関する法律労働時間から比較しよう。

労働に関する法律

まずは、ドイツの労働に関する法律を記載していく。 そこから、日本とドイツの違いを比較していく。
(ドイツの労働に関する法律は、独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)の労働時間規制に係る諸外国の制度についての調査を参照している。)

法定労働時間

1 日の労働時間は 8 時間を超えてはならない。(「労働時間法(ArbZG)」3 条 1 文)。
ただし、6 カ月または 24 週以内の期間を平均して週日の労働時間が 1 日 8 時間を超えない場合に限り、1 日 10 時間まで労働時間を延長することができる(「労働時間法(ArbZG)」3 条 2 文)。
また、労働協約に基づく事業所協定や個別協約によって、3 条の規制を適用除外とすることも可能である。

日本とドイツ共に1日の労働時間は8時間を上限としている。 法定労働時間に関して、大きな違いはない。 例外がある事も共通している。

休憩時間

使用者は労働時間の長さに応じてあらかじめ決められた休憩時間
①合計 6 時間を超え 9 時間以下の労働については 30 分以上、
② 9 時間を超える労働については 45 分以上、
を労働者に与える義務を負う。
使用者は、 6 時間を超える場合には労働者を休憩時間なしに働かせてはならない(最長連続労働時間)。
なお、休憩時間は少なくとも 15 分ごとに分割して取得可能(最低分割時間)(「労働時間法(ArbZG)」46 条)。

法定労働時間と同じく、両国に大きな違いはない。 ただし、日本の場合、休憩時間が守られているとは言いがたい。

休息時間

労働者は、 1 日の労働時間の終了から次の日の開始までの間に連続した最低 11 時間以上の休息時間をとらなければならない(「労働時間法(ArbZG)」5 条 1 項) 。

ドイツの労働者は、労働終了から次の日の労働を開始するまでに、11時間以上の休息を義務付けている。
つまり、1日13時間以上労働できないようになっている。 日本との最大の違いだと僕は思っている。 日本には、ドイツの労働時間法5条に該当する法律が存在しない。

日曜・祝日の休息

労働者は、日曜日および法定祝日は、0 時から 24 時まで就業してはならない(「労働時間法(ArbZG)」9 条)。
ただし、9 条の規定にかかわらず、平日に労働をすることが可能でない範囲で、例外が認められている(「労働時間法(ArbZG)」10 条 1 項)。

ドイツの労働者は、例外はあるものの、日曜日および祝日に労働できない。 休息時間と同じく、日本には該当する法律はない。

年次有給休暇

継続勤務期間が 6 カ月以上の労働者は、1 年につき 24 日以上の年次有給休暇を取得することができる(「連邦休暇法(BUrlG)」3 条 1 項、4 条)。

ドイツでは、1年目から24日以上の有給休暇を取得できる。
日本では、1年目で10日の有給休暇だ(6年目で20日取得)。 大きな差がある。
そして、有給休暇の取得率にも大きな違いがある。 これについては、後述する。

病気休暇

労働者が、有給休暇期間中に病気になった場合、労働不能との医師の診断書がある日については、有給休暇に算定されない(「連邦休暇法(BUrlG)」9 条」。
この場合、「賃金継続支払法(EntgFG)」により有給の病気休暇となる。

ドイツでは、風邪などの病気で休んだ場合、有給休暇とは別の休暇を取得できる。 これは、「病気は労働者の責任ではない」と考えられているからだ。 「自己責任」にされてしまう日本とは、大きな違いと言える。

小売業における労働者の労働時間保護

労働者の労働時間保護を目的として、「閉店法(LadSchlG)」によって、小売業における営業時間は、原則として月曜日から土曜日の 6 時から 20 時までに制限されており、日曜日・祝日は駅のキオスク等(営業時間は 11 時から 13 時まで)を除き営業が禁止されている(「閉店法(LadSchlG)」3 条 2 項、5 条)。 なお、2007 年 1 月以降、「閉店法(LadSchlG)」については、ドイツ連邦政府から各州政府へ権限を移行することが「基本法(GG)」により決定され、大半の州において月曜日から土曜日に関しては 24 時間営業が認められている。

労働時間法(ArbZG)は、労働者側に関する法律だ。 加えて、閉店法(LadSchlG)により、企業側にも制限を設けている。

以上が、僕が調べた範囲での日本とドイツの労働に関する法律の違いだ。 労働者の立場からすれば、明らかにドイツの方が優れている。
「日本とドイツ、どちらで働きたいか?」と問われれば、僕なら当然ドイツと答える。

ただし、いくら法律で規制していようと、守られていなければ意味がない。
日本では、労働基準法を守っている企業の方が少ないのではないだろうか?
では、ドイツはどうなのだろうか。 労働時間から見てみよう。

労働時間

下図は、OECDが調査した2011年の一人当たりの年間総実労働時間だ。

2011年一人当たりの主要国の平均年間総労働時間。アメリカ1787時間。日本1728時間。イギリス1625時間。フランス1476時間。ドイツ1413時間。オランダ1379時間。日本はドイツより年間の労働時間が300時間多い事がわかる。

統計元:OECD(経済協力開発機構)

日本とドイツでは、年間の労働時間に300時間以上の差がある事がわかる。
月で25時間以上の差がある。 これだけでも十分な差があると思うが、おそらくそれ以上の開きがあるだろう。

上記のデータは、事業者申告の集計だ。 つまり、サービス残業などは含まれていない。 実際の労働時間は、アメリカを上回っているだろう。

加えて、有給休暇の取得率を比較しよう。
旅行会社Expediaが調査した有給休暇取得率によると、2012年の有給休暇消化率は、ドイツは90%(平均有給休暇30日で28日消化)、日本は38%(平均有給休暇13日で5日消化)と大きな差がある。

ドイツ含むEU圏は有給休暇取得日が多く、有給休暇の消化率も高い。 一方、日本は有給休暇取得日が少なく、有給休暇の消化率も低い事がわかる。

以上のデータから、ドイツでは、労働者を守る法律がしっかりと機能している事がわかる。

社畜グレイイラスト。ドイツと日本の有給休暇の違い。

労働時間の少ないドイツの方が労働時間が多い日本よりも生産性が高い

実は、ドイツの方が日本より「一人当たりのGDP(国内総生産)」が高い。
「GDP」は日本の方が高いが、「一人当たりのGDP」で、日本はドイツに負けているのだ(2013年時点で日本24位38491ドル、ドイツ18位44999ドル、IMF調査参照)。

これが意味するのは、「日本は、単位時間当たりの効率が悪い上に、生産性そのものも低い」という事だ。
長時間労働したからといって、生産性が上がるわけではない。 この事を、経営者は特に認識しておくべきだ。

最初に「日本の労働環境は異常である」と述べた。
法律は弱いし、そもそも守られていない。 労働時間が長く、有給休暇も取れず、効率が良いわけでもない。 給料が低く、従業員は不満だらけ。
これは「異常である」としか言い様がないのだ。

そんなおかしい労働環境に居て、あなたの認識もおかしくなっている可能性がある。 一度根本から見直してみよう。

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