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社畜の起源

2013年10月28日

「日本の経済は未だ戦時体制のまま」という仮説

「社畜になる理由」のページで「社畜になる大元の原因は、戦時中にあるのではないか?」と述べた。
そして、参考になる本があったとも述べた。 その本を紹介しよう。
野口悠紀雄氏の「1940年体制(増補版) ―さらば戦時経済」だ。

僕が面白いと思ったのは、「現在の日本経済を構成する主要な要素は、戦時期に作られた」という仮説である。 野口氏は、日本の経済体制は未だ戦時体制であることを指摘し、この仮説を「1940年体制」と名付けた。

経済とは、お金、物、サービスの流れの事だ。 生産者が商品やサービスを提供し、消費者が商品を買ったり、サービスを受けたりする。 政府は市場が上手く行くように調整する。
人間として生まれた以上、全ての人間は経済に関わっている。 赤ちゃんだって、親から食べ物や服を与えられる。 つまり、間接的に経済活動をしている事になる。
誰だって関わっている経済活動の主要な要素は戦時期に形作られた、と野口氏は主張しているのだ。

「1940年体制」という仮説を真とするなら、「現在の労働者の働き方や習慣も戦時期に作られた」と言える。
社畜や企業戦士の誕生であったり、有給休暇を取得できない環境であったり、サービス残業が当たり前のような企業が横行するのは、戦時期が起源ではないだろうか。

戦時期に形作られた要素をいくつか挙げよう。

戦時期に一変した製造業

日本を代表する企業の大半は、戦時期に成長した。
例えば、自動車産業だ。
トヨタ、日産、いすゞは軍用トラックメーカーとして、戦時期に発展した。 他の自動車企業にしても、戦時中には軍用機や戦車を作っていた。

そもそも、戦前の日本の自動車企業は弱かった。 乗用車の分野では、フォードとGMが日本市場を支配していた。 この状態が変わったのは、1936年に「自動車製造事業法」が制定されてからだ。 この法律により、日本企業は、税制面や資金調達面で優遇され、関税引き上げや輸入制限による保護も行われた。 そして、海外乗用車の日本市場独占を封じる事に成功した。
現在もエコカー減税等の手法を凝らし、外国車を閉めだしているのではないだろうか?

自動車産業以外にも、戦時期に一変した産業や企業は多数ある。

戦時期に力を増した新聞社

新聞社の発行部数と影響力も戦時期に大きく増した。 政府が1941年に「新聞事業令」を制定し、多数あった新聞社が統合された。
例えば、「読売」、「報知」統合による「読売報知」。
「都新聞」を中心とした「東京新聞」。
「日刊工業」、「経済時事」両紙統合による「日本産業経済」。
その他にも統合により、「毎日新聞」「北海道新聞」「中部日本新聞(中日新聞)」等がある。
これらの新聞は、現在も強い影響力がある新聞だ。

さらに、当時の内務省が中心となって進めた「一県一紙主義」によって、1939年に848紙あった日刊新聞は、1942年には54紙にまで減少した。
この目的は、言論統制だろう。 政府にとって不利な情報は、国民に流したくない。 情報機関は最小限の方が情報を統制しやすい。
そして、現在も一県一紙主義は続いている。

戦時期に変わった企業の制度や習慣

日本型企業の特徴であるとされる「年功序列賃金」や「終身雇用」は、戦時期に形作られた。 理由は「戦争」の為だ。
労働者が企業を転々としていては、飛行機、軍艦、武器等の軍需品製造が安定しない。 政府としては軍需品の製造を安定させたい。 製造を安定させる為に、労働者をひとつの企業に留まらせたい。
その為に政府は、労働者が企業に留まるような仕組みを作った。 その仕組みが、年功序列賃金であったり、終身雇用であったり、退職金という制度や習慣だ。

戦時期に変わった労働者の働き方

さて、企業が変われば労働者の働き方も変わる。 労働者も企業に合わせなくてはならない。 現在では、給料は月給払いが当たり前の事とされているが、戦前は日払い労働者の方が多く、企業を転々としていた。

戦時期を境に労働者の働き方が一変した。 企業を転々としていた労働者は、年功序列賃金や終身雇用の恩恵を受ける為、ひとつの企業に留まるようになった。 企業が利益を上げれば、労働者に恩恵がある。 その為、労働者は企業の為に、一所懸命働く。

この働き方は、第二次世界大戦が終了したはずの現在も続いている。

労働者の働き方も未だ戦時体制

年功序列賃金は、ネズミ講と同じシステムである。
年功序列賃金を維持するには、企業が常に成長していなければならない。

戦時中とその後の高度経済成長期では、企業が成長し続けていた。 企業が成長し続けていれば、年功序列賃金は成り立つ。 戦時中から1980年代後半までは、企業が成長していた為、労働者にも恩恵があった。

では現在はどうだろうか。 現在、多くの企業の成長は停滞、もしくは衰退してしまっている。 企業が成長しなくなったので、年功序列賃金は機能しなくなった。 つまり、労働者に恩恵はない。

戦時中からバブル崩壊前までは働きに見合った給料を貰えた。しかし、現代の社畜は、どれだけ働こうとそれに見合った対価がない。

現在は、「企業に尽くす」という働き方は時代遅れなのだ。

戦時体制を脱却しよう

1940年体制のサブタイトルは、「さらば戦時経済」だ。 これは、著者 野口悠紀雄氏の警告ではないだろうか。 国民、労働者、企業、政府等の個人にしろ団体にしろ、戦時体制を続けていたら危ないぞ、という事をサブタイトルに込めているように思える。

日本全体が戦時体制を解除するのはいつになるだろうか。

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