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下落する賃金

2014年7月24日

最高水準「だった」日本の賃金

働いている人達は、何の為に働いているだろうか。 ほとんどの人は、「お金の為」だろう。 僕も数年間、お金の為に社畜と化していた(当時、社畜という意識はなかったが)。

社畜を辞めた理由は、「企業で働いていてもお金が稼げない」からだ。
お金の為に働いているのに、給料が上がらない。 いや、上がらないどころか、給料が下がってしまう可能性の方が高い。
加えて、仕事の「質」は際限のない高さを求められ、「量」も増えるばかりだ。 これなら、自分で稼いだ方が楽である。

日本は、間違いなく経済大国「だった」。
日本の賃金は、文句なく世界最高水準「だった」。
過去形なのは、他国に抜かれまくったのに加えて、実際に賃金が減っているからだ。

「経済が良好か否か」を判定するのに、賃金ほどシンプルでかつ重要なものはない。
というわけで、賃金の推移を見てみよう。

賃金の推移

平均月間現金給与総額。厚生労働省の毎月勤労統計調査。2013年の全産業の現金給与総額は、31万4054円。1990年が32万9443円なので、23年前よりも安い。1997年の37万1670円がピークで、それ以降は傾向的に下落している。

統計元:厚生労働省 毎月勤労統計調査

2013年の全産業の現金給与総額は、31万4054円である。
1990年が32万9443円なので、23年前よりも安い。
1997年の37万1670円がピークで、それ以降は傾向的に下落している。

では、なぜ賃金が下落し続けているのか?
簡潔に言うと、「製造業が縮小して、非製造業が拡大した」からだ。

上記のグラフのとおり、製造業はリーマンショック時には大きく下落したものの、長期的には下落していない。 製造業の賃金水準自体も、非製造業より高い。
対照的に、医療福祉業界は下落し続けている。

そして、就業者数にも変化がある。 下のグラフに示すように、製造業就業者数は、ほぼ一貫して下落している。 逆に増えているのは、非製造業、なかでも医療福祉関係だ。

就業者数の推移。製造業就業者数は、ほぼ一貫して下落している。逆に増えているのは、非製造業、なかでも医療福祉関係。

統計元:総務省統計局

つまり、『「賃金水準の高い製造業」から「賃金水準の低い非製造業(主に医療福祉)」へ労働者が流れるので、全体の賃金水準が下落した』のである。

また、非正規労働者が増加しているのも、主に非製造業のほうだ。 言うまでもない事かもしれないが、非正規労働者は、全体の賃金より低い。
(別の回で述べようと思うが、最近の傾向として、時給換算した給与が正規・非正規であまり変わらない、もしくは逆転してしまう現象も起きている。 したがって、必ずしも非正規労働者の賃金の方が低いというわけでもない。)

賃金水準の高い製造業に労働者を移せば解決するか?

では、製造業の賃金が高いから、そちらに労働者を移せば良いのか?
そうではない。

日本の製造業の縮小は、中国の工業化によって起きている現象なので、不可避である。 賃金水準が違う上に、人口も桁違いの中国に、「価格」で勝てるわけがない。
だいぶ前から、ほとんどの家電製品に「made in china」と書かれている。
レノボ(pc)、ハイアール(白物家電)、ファーウェイ(モバイルルーター)等の中国メーカーの製品が、家電売場にあふれている。 この傾向はこれからも続く。

それから、日本は高齢化社会に突入している。 介護福祉業界の労働者が増えるのは、自然な事だ。 日本の製造業の縮小と同様に、介護福祉業界の労働者が増えるのも、不可避である。

介護福祉業界の賃金下落については、介護保険料が給与の原資になっている。 だから、賃金を上げるには、介護保険制度を見なおさなければならないので、難しい面もある。
しかし、今後、介護はますます重要になる。
日本の財政が破滅的な状態ではあるが、介護保険料を引き上げなければならないだろう。 そうでもしないと、現在の低い賃金水準では、労働者が離れてしまう。

1980年代のアメリカと同じ問題に直面している

1980年代のアメリカは苦しんでいた。
なぜなら、自国の製造業が他国の製造業に負けていたからだ。 他国とは「日本」の事だ。 「made in japan」の自動車や家電が優秀で、太刀打ちできないのだ。 日本製品の登場により、アメリカの製品が売れない。
当然、失業者は増えたし、賃金も下がった。

そして、現在の日本は、1980年代のアメリカと同じように苦しんでいる。
原因は、新興国、特に中国の台頭だ。 安くシンプルな製品に、日本製品が太刀打ちできなくなりつつある。
当然、失業者は増えたし、賃金も下がった。

1980年代のアメリカと現在の日本の問題は、「強力なライバルの登場により、自国の製造業がおびやかされた」という点で同じである。
では、この問題をどのように解決すればよいか。

アメリカは、この問題を解決した。
アメリカの答えは、「製造業以上に生産性の高い産業を興す」だ。

アメリカも日本と同様に、製造業の労働者数は減少している。 日本と違うのは、「製造業以上に生産性の高いIT産業、金融業に労働者が移動している点」だ。 それが、アメリカの生産性、および、平均賃金を底上げしている。

賃金を上げるにはどうすればいいか

では、日本でこの問題を解決するにはどうすればよいか。
僕もアメリカ同様、日本全体の賃金を上げるには、「生産性の高い新産業を興すしか方法はない」と考えている。

生産性の高い新産業を興すのは、困難な課題だ。 少なくとも、しがらみや利権でがんじがらめの政府や大企業が、解決できる問題とは思えない。

では、個人ではどうだろうか? 僕は、今の時代、余計な束縛のない個人や小企業の方が有利だと思っている。

例えば、スティーブ・ジョブズは、自宅のガレージでアップルを創業した。
現在、アップルは世界を代表する企業だ。

マーク・ザッカーバーグは、大学在学中に友人とフェイスブックを創業した。
フェイスブックの元は、ハーバード大学の学生が交流を図る為のサイトだ。
それがいまや世界を代表するSNSだ。

チャド・ハーリー、スティーブ・チェン、ジョード・カリムは、youtubeを創業した。
創業のきっかけは、「皆で簡単にビデオ映像を共有できれば」と思いついたことによるらしい。
googleは、youtubeを16億5千万ドルという巨額で買収した。

大金を得て喜ぶyoutube創業者のチャド・ハーリーとスティーブ・チェン

上記は、「大成功」という意味で、極端な例かもしれない。
だが、「小さな成功」や「普通の成功」の話は、数え上げればキリがない。

アメリカのIT産業の発達は、政府が積極的に支援をしていたわけではない。 個人個人が、やりたい事をやっただけだ。 それが結果的に、巨大な産業となった。

日本はどうだろうか。
日本の労働者が、古い産業にしがみつく生き方しかできないのなら、今後も賃金は下がっていくばかりだろう。

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