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貯蓄率

2014年1月24日

以前は高かった貯蓄率

貯蓄率とは、「世帯収入の内、消費に回さない部分の比率」の事だ。
日本人は貯蓄する人が多い」と世界から言われている。 この事が正しいかどうかデータから見てみよう。

下の図は終戦前の個人貯蓄の比率だ。

戦前の個人貯蓄率。1930年には6%程度でしかなかった貯蓄率が、1935年を境に急激に上昇していった。

戦前の個人貯蓄率
統計元:日本銀行統計局「明治以降 本邦主要経済統計」

このデータから、第二次世界大戦が本格的に始まる前は、貯蓄率が低かった事がわかる。 1930年には6%程度でしかなかった貯蓄率が、1935年を境に急激に上昇していった。 1944年には40%近くに達した。

そして、終戦後も貯蓄率の高さが継続した。

戦後の個人貯蓄率。終戦直後は、インフレで貯蓄率がマイナスになるものの、その後上昇していき、20%近くまで達した。

戦後の個人貯蓄率
統計元:日本銀行統計局「明治以降 本邦主要経済統計」

終戦直後は、インフレで貯蓄率がマイナスになるものの、その後上昇していき、20%近くまで達した。
これがバブル崩壊まで継続した。

よって、「日本人は貯蓄する人が多い」は事実である。
しかし、この結果は国民の自主的な節約ではなく、元は国の政策である。 当時の国の目的は、国民のお金を戦争に回す為だ。
(詳しくは野口悠紀雄氏の著書「1940年体制(増補版) ―さらば戦時経済」参照)

興味深い事に、貯蓄率は、終戦後も1930年のような水準に戻る事はなかった。
「社畜の起源」のページで、「企業の制度や労働者の働き方は未だに戦時体制である」と述べた。
そして、貯蓄率というか、お金の使い方も戦時体制なのである。
「贅沢は敵だ!」「欲しがりません勝つまでは」「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」といった戦時中のスローガンが、習慣と言えるレベルにまで達している。

低下した現在の日本の貯蓄率

この後の貯蓄率はどうなっただろうか。 最近のデータを見てみよう。

1992年から2009年の主要国の家計貯蓄率。日本の貯蓄率減少が著しい事がわかる。消費や投資にお金をまわしているアメリカよりも日本の方が貯蓄率が低い。

1992年から2009年の主要国の家計貯蓄率
統計元:OECD Economic Outlook 87 database

日本の貯蓄率減少が激しい。 最近は1930年の6%すら下回っている。 主要国のどの国よりも低い値だ。 消費や投資にお金をまわしているアメリカよりも日本の方が貯蓄率が低い。
では、なぜ貯蓄率が減少したのだろうか。

日本の貯蓄率減少は、貯蓄する余裕がなくなったから

日本の貯蓄率減少の理由は、ものすごく単純で、「貯蓄する余裕がなくなったから」だ。

理由は主に以下の2点だ。

①「貯蓄する人」より「貯蓄を切り崩す人」の方が多くなった
②収入が減った

①は、少子高齢化による特有の減少だ。
労働者は、働いて稼いだお金を貯蓄する。
仕事を退職した高齢者は、生活や娯楽の為に、貯蓄を切り崩す。
少子高齢化では、高齢者が多い為、「貯蓄する人」より「貯蓄を切り崩す人」の方が多くなる。 だから、貯蓄率が低下していった。
それに加えて、②の問題がある。
①の説明で「労働者は、働いて稼いだお金を貯蓄する」と言ったが、現在の日本では収入が減った為、労働者はそもそも貯蓄する余裕すらない。

2012年の平均年収が発表された(「非正規雇用の平均年収」のページ参照)。
正規、非正規合わせた平均年収が408万円で、ピークの1998年より59万円少ない。
そして、問題なのが非正規雇用者の平均年収である。
男性が226万円、女性が144万円、全体では168万円と正規雇用者に比べると、格段に低い。 特に若い世代ほど非正規の割合が多く、生活費だけでいっぱいいっぱいだ。

「最近の若者は車も家も欲しがらない。嘆かわしい。」などという旨の発言をする人がいる。
そんな発言をする人は、「現状をまったく理解していない」もしくは「現状を直視したくない」、または「現状を理解しつつも、老年側が非難されたくないから、とりあえず若者側を悪者に仕立てあげたい」のいずれかだろう。
実際には、若者は高額品を買うどころか、貯蓄すらできないのが現状である。

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