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求職者支援訓練がブラック企業化しつつある

2015年12月14日

求職者支援訓練校の講師が忙しそう

以前、求職者支援訓練(元・基金訓練)のページで、求職者支援訓練について解説した事がある。
僕自身が求職者支援訓練を受講して良いと感じたので、友人にも求職者支援訓練の受講を勧めている。

だが、受講した友人の1人からある事を聞いた。
訓練校がブラック企業化している」と言うのだ。
僕が友人に聞いた事を箇条書きにしてみた。

・友人が通っていたA訓練校の求人募集があったので、講師にA訓練校の事を尋ねたら「絶対に就職しないほうがいい、地獄を見る」と言われた
・B訓練校がブラックすぎてA訓練校に転職してきたという講師が、わずか三ヶ月で退職した
・A訓練校の面接練習が「超過労働できるか?」とか「賃金低下を受け入れられるか?」といった内容ばかり
・説明会で「当訓練校を受講すればまず就職できます!」と宣伝しておきながら、実際の就職率は60%程度
受講生よりも講師の方が、熱心に求人検索をしている

思い出してみると、僕が3年前に通っていたC訓練校でも下記のような事があった。

・C訓練校の求人募集があったので、受講生の1人が講師に尋ねたら「ウチは絶対にやめたほうがいい」と言われた
・講師の給料が最低時給ギリギリのライン(ハローワークの求人募集から計算)
・就職が決まっていない受講生にC訓練校の事務業務を「短期間だけ」勧めていた
 (「見かけ上の就職率を上げる」「雇用保険被保険者にする」という目的のため)
・受講生で企画した送別会に講師を誘ったら、「忙しい」という理由で断られた

求職者支援制度そのものがブラック企業となる原因

上記のような事態になるのは、僕や友人の通っていた訓練校だけだろうか?
僕はそうは思わない。
おそらく、「日本全国の訓練校がブラック企業化している」と考えている。
原因は、求職者支援訓練の制度そのものにある。

厚生労働省の求職者支援制度のご案内にある資料によると、訓練を実施している企業に支払われる報酬(奨励金)は、受講生1人につき1ヶ月5~7万円だ(基礎・実践コースと就職率で変化)。
問題は、報酬のほとんどが「受講生の数」で決まってしまう事だ。

他の資料を見てみると、厚生労働省は1クラス10~30人を想定しているようだ。
僕が計算したところ、「受講者が30人程度」の場合なら問題ない。
1ヶ月につき受講者30人×5~7万円で、報酬は150~210万円となり、問題なく運営できるだろう。

問題は「受講者が10人前後」の場合だ。
1ヶ月につき受講者10人×5~7万円だと、報酬は50~70万円だ。
初期投資(机や椅子、PC等)、人件費(講師、事務員等)、設備維持費(オフィスレンタル代、光熱費等)、その他の雑費を考えると損益分岐点ギリギリになる。

東京のような人口の多い都市では、受講生は集まりやすい。
その分、ライバルとなる企業は多いだろうが、上手くやりくりすれば経営が成り立つだろう。

一方で、札幌や仙台のような地方中枢都市で、おそらくギリギリのラインだ。
実際に、僕が札幌で受けた求職者支援訓練の受講生は12人だった。
その時の講師の話では「12人では赤字」と言っていた。

地方中枢都市より規模が小さい地方では、受講生が集まりにくい為に、経営は絶望的だ。
町や村程度の規模では、求職者支援訓練を実施しているところは、ほぼ存在しない。

求職者支援訓練は講師に負担がかかる

受講生が少数の場合は、まともに運営できるような状態ではない。
そして、従業員である講師に多大な負荷がかかる。

訓練を実施している企業は、赤字を回避する為に支出を見つめなおすだろう。
そして、一番削られやすいのは人件費だ。
より具体的に言えば、「最低時給並の待遇」「1人では無理のある仕事量の強制(講師と事務員を兼任等)」「サービス残業の強要」を従業員に強いるようになる。

実際に、ハローワークで求職者支援訓練の講師の求人を検索してみると、
月給16万円、講師の経験がある方、イラストレーターやフォトショップを使用できる方、求職者支援訓練の講義、他教室の講義にも対応、講義以外にもホームページの作成、その他雑務あり
といったひどい求人募集が多数ある。
僕なら絶対にやりたくない仕事だ。

僕は、「受講者の立場」なら、求職者支援訓練は良い制度だと思っている。
自力で稼ぐ為に必要な基礎知識が、訓練校の講義を通じて得られるだろう。
訓練校で知り合った人を通じて、人脈が出来る可能性もある。
実際に、僕の知人は、訓練校で知り合った人と共に新しい事業を始めた。
また、数ヶ月間ではあるが、社畜から脱出できるのはそれだけで意義があると思う。

ただし、「講師の立場」だと、求職者支援訓練は実にイヤな制度だ。
現状では、低賃金な上に重労働なので、講義の質が高い講師ほど辞めていくような状態になっている。
このままでは、教える講師が居なくなる。

「受講生の数と就職率」ではなく「講義の質」に重点を置くべき

先に述べたが、求職者支援制度の問題は、報酬が「受講生の数(と就職率)」で決まってしまう事だ。
極端に言ってしまえば、受講生をかき集めて(ブラック企業でもブラックバイトでもなんでもいいから)就職さえさせてしまえば、報酬がもらえてしまう。

このような報酬制度になっている理由は、厚生労働省(というより政府)が「失業率」という数字しか意識していないからだ。
僕の考えでは、「受講生の数と就職率」よりも「講義の質」に重点を置いた方が、長期的に生産性が上がる。
ひいては、失業率も改善されるはずである。
今後は、「受講生の数」ではなく「講義の質」で報酬が決まるような制度に改善してもらいたいところだ。

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