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円安のメリットはもうない

2015年2月22日

為替は経済の基本要素

最近(2015年2月時点)、円安の動きが加速している。 2012年11月末のドル円為替レートは約80円であったが、2014年1月末には約120円となり、約40円ほど円安に動いた。

経済に関わる話題やニュースで、円高・円安についてのテーマは多い。 経済のあらゆる面で、何らかの形で通貨が絡んでくるので、このテーマは重要だ。
実際、リアルタイムで、あらゆるメディアで為替と株の値動きが通知されている。

「円高は円の価値が他通貨に比べて高い事」で、「円安は他通貨に比べて価値が低い事」を表している。

では、円安と円高のどちらが良いのか?
その答えは、立場によって変わる。
それぞれのメリット、デメリットを述べよう。

円高のメリット

まず、円高になると、外国からの輸入価格が安くなる。

例えば、為替レートが1ドル100円の時に、1ドルの製品を輸入したとしよう。
これは、100円を支払い購入したという事だ。
それが、1ドル80円になる(20円円高になる)と、80円で購入できるようになる。

この例からわかるように、「円高になって得をするのは、外国の製品や原料を輸入する立場にいる個人や企業」だ。
また、海外旅行や海外留学する時にも、外国の通貨を使うので、円高だとより安上がりになる。

円安のメリット

では、円安になるとどうなるか?
この場合、日本国内から輸出する製品の売上が上がる。

例えば、1ドル100円の時に、日本国内で100円で販売されている製品を輸出したとしよう。
外国では、この製品は1ドルで売ることになる。
そして、1ドルを円に変えると、100円の売上となる。
ところが、1ドル120円になる(20円円安になる)と、外国で1ドルで売った製品は、120円の売上となる。
円安になった分だけ売上が増すので、得になる。

この例からわかるように、「円安になって得をするのは、製品や原料を輸出する立場にいる個人や企業」だ。
他のメリットとしては、海外からの観光客も来やすくなる。

円高・円安のデメリット

以上で述べたのは円高と円安のメリットだが、もちろんデメリットもある。

円高のデメリットは、輸出した時の売上が下がる。
それから、外国人旅行者が減少する。

円安のデメリットは、輸入価格が上がり、国内の物価が上がってしまう。
また、海外旅行時の買い物やサービス料金も割高になる。

以上で述べたメリット・デメリットから考えれば、「輸入業者や消費者から見れば、円高のほうが良く」、「輸出業者から見れば、円安のほうが良い」という事になる。
では、円安と円高、どちらのほうが良いのだろうか?

現在の日本の状態では円高の方が良い

現在の日本の状況を客観的に見ると、円高のほうが良い。
理由は、貿易赤字が定着しているからだ。

日本の貿易収支の推移。2010年までは黒字だったが、2011年から赤字が継続し、しかも拡大している。2014年も赤字予定。

統計元:財務省 国際収支総括表(暦年)

この状態では、円安による輸出額の増加(メリット)よりも、輸入額の増加(デメリット)の方が大きくなる。 したがって、大半の輸出企業にとっても、円安の方が良いとは言いきれない。
なぜなら、「輸出する製品」は、「輸入した材料」で作られる事が多いからだ。

以上で述べた事を前提として、最近の日本の円安状態について考察したい。

円安による企業の収益は業種や規模によって大きく違う

アベノミクス、最後の博打の連載第2回によると、「2013年度の企業の営業利益は、2012年度と比べると、21.5%の増加となった」との事だ。
したがって、企業の事だけを考えれば、円安によって利益が上がったと言える。 ただし、業種や規模で企業の収益は大きく違う。

全産業で、資本金1億円以上の企業の利益率増加が27.9%に対し、資本金1億円未満の企業の利益率増加が7.1%と大きく異なる。 特に、製造業での差は顕著だ。
製造業で、資本金1億円以上の企業の利益率増加が53.0%に対し、資本金1億円未満の企業の利益率増加は5.9%でしかない。

円安で大幅に利益が増加した企業の代表は、自動車メーカーだ。
資本金が1億円以上の自動車・同付属品製造業の営業利益は103.9%と大きく上昇した。
一方で、資本金が1億円未満の自動車・同付属品製造業の営業利益は-19.7%と減少している。

より具体的に言えば、トヨタ、ホンダ、日産を始めとする自動車メーカーは利益が大幅に上昇した。
だが、その下請け業者は利益が減少している。
利益減少どころか、赤字になったり、倒産した企業も多い。(※)

なぜこんな事が起こるのかを一言で説明するなら、「大企業は円安のメリットを享受し、デメリットを下請け(中小)企業に押し付けている」からだ。
大企業は、円安になれば、製品の輸出額が増加するので、利益が上がる。
他方で、下請け企業は、原材料の価格が上がるので、コストの負担が大きくなる。 加えて、電気代も値上がっているので、二重に負担が大きい。


※参考記事
 トヨタの今期純利益予想は初の2兆円、円安で売上高も過去最高に
 トヨタ最高益なのに 下請け7割が減収


大事なのは消費者への影響

上記で述べたように、日本企業『だけ』を考えれば、(業種や企業規模によって異なるが)円安によって利益となっている。
ただし、重要な事が抜けている。
それは、消費者への影響だ。

消費者の立場からすれば、円安は悪い面しかない。

円安のデメリットで説明したように、円安に動けば、国内の物価が上昇する。
実際に、スーパーやコンビニの商品を見てみると、値上がっている。 ファミレスや牛丼チェーン等の外食産業も、値上げをした所が多い。 また、(食料品に限らず)商品自体の質を落としたり、量を減らして対応している企業も多い。

それから、光熱費(特に電気代)の負担も大きくなった。 日本には資源がないので、海外から燃料を輸入するしか手がない。

これらは、消費者にとって、避けようのない税金である。
これ以上の円安は、本当に日本にとって癌になる。

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